皆さんは普段、「勾配(こうばい)」という言葉は聞きなれないかと思いますが、この勾配が各所に設けられてあるからこそ、建築物としての役割や生活の安全が確保されるのです。今回は、屋根をはじめ建築物に絶対必要な「勾配」について考えてみたいと思います。
勾配とは
「勾配」とは、水平面に対する角度の度合いのことを言い、使用されるのは建築物に対しての傾きなので、なかば建築用語に近いところがあります。きつい角度を急勾配(きゅうこうばい)、ゆるい傾きは緩勾配(かんこうばい)とも言います。
勾配の表し方は主に次の4つがあります。
- 百分率(%)…「1%」で表します。0%は0度。100%は、100m進んで100m上がるので、45度です。
- 分数(〇/〇)…「1/100」で表します。1/50なら、50m進んで1m上がる傾斜です。
- 比率(〇:〇)…「1:1」で表します。1:2なら、高さが100m:底辺が200mの傾斜です。
- 角度(°)…「45°」で表します。表記そのままですね。
余談ですが、屋根職人の業界ではさらに、昔ながらの表現方法が使われています。「尺貫法勾配」と言い、寸法勾配とも言われ、長さの単位である「寸(すん)」を使って表します。1寸は約30mmです。
3寸勾配というと、10寸進んで3寸上がるということなので、要するに分数の3/10、10cm進んで3cm上がるのと同じです。
屋根材それぞれメーカーによって、最低限必要とされる勾配が決められています。あまり緩いと、屋根材同士の重ね部分などから雨漏りの原因になりますからね。一般的に、6寸以上の屋根を急勾配の屋根と呼んでいて、スタイリッシュで屋根裏スペースを広くとれる半面、屋根面積が大きくなるデメリットと、リフォーム時には職人がのぼる「屋根足場」が必要になります。
急な勾配屋根は外周足場に加えて、屋根職人が登るための屋根足場が必要となる
建築物のさまざまな勾配
屋根の勾配は、先ほども申しましたように最低限の勾配から急な勾配まで、機能性とデザイン性のバランスを見計らってさまざまな勾配が採用されています。また、棟から軒先までが一定の勾配の屋根が主流ですが、特殊な勾配として「照り屋根(てりやね)」と「起り屋根(むくりやね)」という形状の屋根や、アーチ、球状のタイプの建物も存在します。
雪国の雪落とし対策として、地域によっては急勾配の屋根が多い場所もある
皆さんがいつも車で走ったり歩いたりしている道路も、平面に見えてわずかながら勾配がついています。よくあるアスファルトの舗装道路は、両側に側溝がある場合は「かまぼこ」といって、真ん中が高く、両端が低い構造になっています。勾配がないと水たまりのできる道路となってしまい、自動車通行の安全性が確保できなくなったり、アスファルトが傷んでしまうので重要です。
両側に雨水が流れるよう、平坦な道路は勾配が重要
屋根の樋はもちろん、地中に埋まっている雨水、汚水の排水パイプにもきちんと勾配がついています。水道の給水管など、ポンプの力を使って圧送している管は勾配が必要ありませんが、雨水やトイレなどの排水を自然の力で流そうと思えば、ある一定の勾配を設ける必要があります。汚水パイプに関しては条件が厳しく緩すぎてもキツすぎでもダメで、固形物が水流とともに流れてくれるよう、パイプの太さによって緩めたり急にしたりの調整が必要です。
地中の埋設配管。水平器で精度よく勾配をつけながら配管を進める
このように、水を流さなければならない箇所については、必ずといって良いほど勾配がついていて、高いところから低い排水溝まで、水が流れるようにしっかりと図面の段階から最終施工まで管理が行われています。
ミツルリフォームでは、たとえ他の業者が勾配をつけずに「水平」にしている場所でも、きっちりと勾配がつくように下地をやりかえたり工夫をすることで、雨漏り発生率目標ゼロを形にしています。
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