あなたのお家の屋根勾配（こうばい）は何度ですか？気にした事のある方は少ないかと思います。
今回は屋根の勾配、傾きがもたらすメリットとデメリット、種類や適した環境などについて考えてみたいと思います。
屋根勾配の単位、呼び方
勾配（こうばい）とは、辞書では「傾斜面の傾き示す度合い。 普通、傾斜面の水平方向の変化に対する水平面からの距離の比をいう。」とされており、要するにどれくらい傾いているかを示すものです。建築業界の方なければ、よく道路における坂道のきつさなどで一般的に使われる用語でしょう。
屋根の勾配の呼び方として職人がもっとも使う呼び方、単位は「〇寸（すん）勾配」といいます。これは、比率として水平に10進むのに対し、垂直にいくら上がるかというものを表しています。
他にも角度には、数学で用いられる「〇°（度）」、土木業界などでよく使われる「〇％（パーセント）」などもありますが、屋根業界ではあまり使われることはありません。
屋根の勾配の単位「〇寸」
屋根材による勾配の種類
上記の画像にある「４寸勾配」は、もっとも多く採用されている屋根勾配ですが、勾配はどの屋根材を使用するかによってさまざまで、一定の基準や最低勾配というものが定められていたりします。
・瓦屋根なら４寸勾配以上必要
・スレート屋根なら３寸勾配以上
・金属屋根なら１寸勾配以上（横葺き３寸勾配以上）
といった具合で、主に屋根材と屋根材のスキマからの雨漏りを防ぐため（大雨や風などで逆流するのを防ぐため）に、最低〇寸勾配以上でなければならないと決められていることが多いです。
お家を建てたり改修する際に、屋根の勾配を考えることは少なくないかもしれません。もし、デザイン的にとか、建物の高さ的にとか、種々の条件で勾配をきつくしたい、またゆるくしたいという相談を設計士さんや屋根業者とする際は、使用する屋根材とも合わせてご相談されてはと思います。
勾配によるメリット・デメリット
たとえば、ここ大阪府や泉州地域では、雪がよく積もるから勾配をきつくしようといった発想にはなりにくいですが、地域や環境によって勾配が選定されることも多くあります。
勾配がゆるいメリット
- 設計の柔軟性：勾配が緩やかな屋根は、建築設計の柔軟性を高めます。特に近代的な建築やデザインにおいて、低い勾配の屋根が好まれることがあります。
- 雨水管理：勾配が緩やかな場合、雨水が急速に流れることがないため、雨水の管理が比較的容易です。雨樋や集水装置が効果的に機能しやすくなります。
勾配がゆるいデメリット
- 雨水の排水：勾配が緩やかな屋根では、雨水が十分に速く流れない可能性があります。これにより、雨漏りのリスクが増加することがあります。
- 雪の蓄積：寒冷地域では、勾配が緩やかな屋根は雪の蓄積が起こりやすくなります。これが重い雪である場合、屋根に負担がかかり、構造的な問題が生じる可能性があります。
- 屋根材の寿命：勾配が低い場合、屋根材の劣化が早く進む可能性があります。特に、水の滞留や紫外線への曝露が長期間続くと、屋根材の寿命が短くなることがあります。
- コスト：低勾配の屋根を設計・建設する場合、防水や排水対策が必要となり、これがコストを増加させることがあります。
勾配が急なメリット
- 雨水排水：急勾配の屋根は雨水を速やかに排水します。これにより、雨漏りのリスクが低くなります。急勾配の屋根は、特に雨量が多い地域や積雪の影響を受ける地域で有利です。
- 雪対策：急勾配の屋根は雪の蓄積を減少させます。雪が屋根に滞留することが少ないため、屋根の負荷が軽減され、構造的な安定性が向上します。
- 通風：急勾配の屋根は通風を促進しやすいです。これにより、屋根裏の換気が良くなり、湿気や結露の問題を軽減できます。
勾配が急なデメリット
- デザインの制約：急勾配の屋根は、建築的なデザインの柔軟性が制限されることがあります。特に近代的な建築や特殊なデザインを追求する場合、急勾配の屋根が適していないことがあります。
- コスト：急勾配の屋根は、設計や施工において追加のコストがかかることがあります。急勾配を実現するためには、屋根の構造や補強が必要であり、それに伴う費用がかさんでしまいます。
- 危険な作業：急勾配の屋根のメンテナンスや修理作業は、より危険を伴うことがあります。特に６寸勾配以上になると、作業員が安全に作業できるように、外周足場に加えて「屋根足場」を別途組立てないと作業ができません。
- 建築空間の制約：急勾配の屋根は、屋根裏空間を有効に利用することが難しい場合があります。これにより、住宅や建物の有効な利用スペースが制約される可能性があります。
屋根勾配ひとつとっても、最適な選択肢がありますので、新築やリフォームの際には、慎重に検討することをオススメします。
積雪地域の急な屋根勾配（白川郷）
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